「あの花」を見て泣けなかった理由をEUREKAと対比して考えたらどうだろう

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

をいまさら見ました。予想通りというか泣かなかったのですが、某飲み屋でそう言うと、「お前は本当に赤い血が流れているのか!?」という反応でした。
という訳で、色々とこの事実をどう受け止めたものかと考えたのですが、そのときに思い出したのはEUREKAでした。

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EUREKAはバスジャック事件がきっかけでしたが、理不尽な死で時間が止まったようになってしまった人たちの再生の物語という点では同じだと思います。まぁ別にどっちが良いとか言うわけではないのですが、比べて考えると面白いかなと。

この二つを比べてみると、あの花で暗黙のうちにあったものは、「意味を問えば、理由を求めれば、合理的な答えが得られて救われる」という事ではないでしょうか。あの花にはめんまがいたので、めんまの願いは何なのか?とかめんまはなぜ消えないのか?とか真摯に問えば答えが得られるという安心感があります。

一方EUREKAでは、理由を問うことはとても残酷なように書かれていたと思います。被害者の兄妹の台詞はたしかこんな感じだったかと。
「お母さんは帰ってこないの?」(お母さんはバスに乗っていたわけでなく、ただ事件後に出て行っただけです)
「帰ってこないだろ」
「どうしてお母さんは帰ってこないの?」
「他に男の人ができたんだよ」
「どうして他に男の人ができたの?」
「父さんが母さんを殴ったからだろ」
「じゃぁどうしてお父さんはお母さんを殴ったの?」
で兄は妹の問いにもう答えられず、妹もそれ以上は問わず、兄妹はこの台詞を最後に後半まで全くしゃべれなくなってしまうわけです。

この映画に関しての文章で、閉鎖的な社会では犯罪を排除しようとして、犯罪の被害者まで排除されてしまうとあったと思いますが、兄妹はこの問いを続ければ、なぜ自分たちは被害者になったのか?なぜ犯人(警察に射殺されている)はそんな事をしたのか?を問わざるを得ず、答えは得られないことが兄妹には分かっていたという事だと思います。そしてその後また不可解な殺人事件が起こり、やっと兄がしゃべる言葉は、「なして殺したらいかんと?!」という問いだったわけです。

この二つの作品から僕が受けとったことは正反対のようでもありますが、共通しているのは答えさえ得られれば救われるが、答えは得られるか?という事ではないかと思います。

まぁこういう風に考えると、これがヘーゲルの言う即自、対自で、その二つから得られるものが即かつ対自?って感じで、面白くもあります。まぁ色々と考えさせられるアニメだったと思います。